ネコです

ベットに横になると、まずはすみちゃんによる施療です。
先生は夜の8時ぐらいにならないと来ないらしく、先にお弟子さんが大体の所見をまとめ、先生に伝えることになっているようです。
まずはお腹をぐぐっと押して痛いかどうかを確認。
と、すみちゃんが
「よく内出血しませんか?」
「・・・。ない・・しゅっけ・・・つ・・・?んーーー??」
内出血と言われても思い当たらずにいたら
「知らない間にアザが出来てたりしてないですか?」
「!!!あ、あります。朝起きたらアザが出来てたり!」
「やっぱり。皮膚が弱いですねー。」


なんで触っただけでそんなことがわかるんだろう。スゴイなー。
次は足。
足首の内側あたりをいろいろグリグリ押していきます。
これがどこ押されてもイタイイタイ。
固いのはイカンそうです。


早速足の三陰交という婦人科系のツボとそのあたりのツボを鍼治療です。
その鍼を打ったところに1センチほどのもぐさをつけて燃やします。
足が冷えるとイカンからということで、足元にはゴム製の湯たんぽが。
この湯たんぽ、私は寝転んでいたので見えなかったんだけど、誰かがすみちゃんにポイっと渡しました。
(えっ?誰だろう、今の人?)
そうこうするうちに足からだんだんホクホクしてきました。


その日はお腹の調子がよくなかったのでお腹にも、肩と首のコリもひどく首と頭にも鍼をされました。
全然痛くなかったんだけど、頭に刺されてる自分を見ないで幸いでした。
鍼&もぐさの間、今までの治療歴や病歴、気になることなどいろいろ質問されました。


私は一番入り口のベットだったのですが、真ん中もその奥のベットも先客がいるようでした。
隣はおじさんらしく、
「うぇ〜、うぅ〜、ふぐぅ〜」
と唸りのようなうめきのような声が。
すると、つと仕切りカーテンがさっと開き、げんちゃん(これも後で知りました)が
「あのね、この人は今ぐっとマッサージをしてもらっててこういう(うめき)声が出てるんです。大丈夫ですからね。」
「えっ?いや、あの全然気にならないですから・・・。」
「あ、そぉ?初めての人で、びっくりする人がいるからね〜。」


おじさんのうめき声はちっとも気にならなかったけど、げんちゃんのその急な心遣いにびっくりしました。
それからほどなくして、隣のおじさんは帰っていき、相棒が隣のベットに呼ばれたようでした。
私はちょうどうつぶせになってフニャフャ状態だったので、耳だけダンボ。
どうやら、先生のご登場のようでした。
まずは相棒から。


「ふん、うん、うん。あなたは気で引っ張ってく感じやね。マラソンやってた?ん?やってない?んー、マラソン選手になってたら、いい選手になってただろうね〜。」


なんなんだ、なんなんだ。
なんでマラソンの話なんだ?
先制パンチをくらったかのようでした。
先生によると、相棒は体が少々疲れてもなんとか気で持っていくので、プロレスみたいにバーンバーンとやるタイプではなく、じっくりじわじわ行くマラソンタイプだということです。
でも相棒は納得したようで、週半ばで体の調子が悪いなぁ〜と思っても休んだりしないで、なんとか週末までと思って気力で仕事をこなすんだと言ってました。
また、相棒の気が疲れ気味で弱くなっていることも指摘されました。
私はうつぶせになっていたので後から相棒に聞いた話ですが、相棒はこのとき仰向けに横になっていて、先生が相棒の体の上10センチぐらいのところで、上から下の方へ手をかざして振っていただけだそうです。
おじさんが言うところの、「気功でわかってしまう」んだそうです。
唯一体に触れたのは脈をみるときだけ。
それも、確認のためにみているだけで、触らなくても大体その人をみればどんな脈かわかるのだそうです。
相棒のは、だいぶ弱いようでした。「中と下の間の下に近いほう」らしいです。(←専門用語の脈の名前があるのですが、忘れました)


さて、いよいよ次は私の番。先生のお顔拝見です。
ドキドキ。ドキドキ。


「よろしくお願いします!」と顔をむけると、穏やかな笑顔で微笑み返してくださった先生は、70を過ぎているとは思えないほどションとしておられました。だけど、何かオーラのようなものを感じるのは、先生が今まであらゆる経験と知識を活かし数々の患者さんを救って来られたからなんでしょう。


「ふん。ふん。ふむ。ふむ。」
と言いながら、私も体の上10センチほどのところで気功診断。
「うん。気がけっこう強いなぁ〜」とつぶやかれました。それにすみちゃんも同意のうなずき。
(?それって、いいこと?悪いこと?「あいつ、気が強いなぁ〜」って悪女みたく言われる意味の「気が強い」なの?)
どぎまぎしていると、脈をとられました。
「うん。ダンナさんとおんなじような脈してるなぁ〜。」
でも私の方がマシらしいです。


「あのね、とりたててコレといった悪い要因はないみたいよ。まずは、足をとにかく冷やさないようにすること。これが一番。なかなか子どもが出来ないというのは、何かの条件が欠けているんですよ。仮に5つ条件があったとして、1つが欠けていたら後の4つをどれだけ頑張ってもうまくいかない。体外受精を何回してもダメだったいう人がいるけど、それも他の何かが欠けてるんやろね。あなたの場合も何かが欠けてたんでしょう。だから、今日をきっかけに、その欠けているとこを補っていきましょう。大丈夫。あなた、妊娠しそうな顔してるよ。」
「えっ?!本当ですか?」
「うーん。だってネコ顔やもん。」
(ネ、ネコ顔???)


なんでもネコ顔とキツネ顔があるらしく、キツネ顔だと妊娠しづらいそうです。いわゆるホステスさんみたいな、つーんとしたとんがってる感じらしいです。で、私はネコ顔だから大丈夫だというのです。
なんだかこの話が仮にウソであっても、あまりのほんわか度に、私の緊張は一気にゆるんだのでした。
そして、口コミでの患者数とはいえ、今までこの不思議荘には不妊で悩むカップルが何組も来たらしいのですが、ここでの妊娠率がなんと100%なのです。去年は2組だったのですが、そのうちの1組は、奥さん(30後半)は片方の卵巣が機能していなくて、ダンナさん(40ぐらい)は無精子だったそうです。二人ともここに通い、漢方を飲み、鍼治療してもらい授かったのです。そんな夫婦に比べたら、私たちは全然問題ないらしいです。


とりあえず、ひと月に1度不思議荘に通うことになりました。
私は「当帰建中湯」という漢方薬を3ヶ月ほど飲むことになりました。これはすみちゃんが勤めている薬局から送ってくれます。代金は同封の郵便振替で支払うとのことでした。


診察が終わり、待合室に戻ると・・・・
人であふれていました。
みんな患者さんなのかな、と思い壁際の机に向かって座っている人を見ると・・・
先生が弁当食べていた!
しかも持ち帰りパックの鯖寿司かなんか。
漢方に詳しい先生だから、もっと栄養に気をつけてるのかと思ったのに!
そして、その机!先生のだったのかー。部屋せまいから、患者とか先生とか関係ないんだろうね。


イスをすすめられまた座ると、誰かがさっとまたジャスミンティーを注いでくれました。
(この人もお弟子さん?でもお弟子さんはすみちゃんとげんちゃんの二人って聞いてたんだけどな)
すると、先生がすみちゃんに
「ご主人の方、十全大補湯のんでもらったらどうかな?」
すみちゃんは、一緒にきたうちのおじさんが座っている後ろから何やらごそごそ取り出し、奥で薬を入れ、それをはいっとジャスミンティーのおじさんに渡しました。そのおじさんは慣れた手つきでラベルシールに薬の名前と用法をペンで書くと、相棒に渡しました。
いただいた薬の入れ物は、透明プラ容器で、キャップに「KAGOME ラブレ」って書いてました。そう、吉永小百合さんも飲んでいる、アレです。これが薬のビン?!
いい感じです。ホント、いい感じです。このあたりで不思議荘全快モードです。
このジャスミンティーのおじさんはSさんといいます。Sさんが何者かは後で判明します。


さて、お薬ももらったのでお会計をと思うんだけど、一向にそのお声かけがなく、
「あのー・・・、お金を・・・。」というと、机に向かっていた先生が
「けっこうですよ。」
(へっ?)
「いりません。お金がいるときはそこ書いてあるとおりですから。」
(えぇっ!?)
いや、でもラブレは結構たくさん入ってるし、壁に
>経絡○○治療1万円、鍼○○治療4,000円、ちょこっと鍼○○治療2,000円<って書いてあるし・・・2時間ぐらいじっくりみてもらったのに
「で、でも・・・」
すると先生の横に座っていた年配の穏やかな笑みを浮かべたマダムが諭すように
「ここはね、先生がいいっておっしゃったら、いいんですよ。」


結局本当にいりませんでした。
私の漢方薬はすみちゃんの勤め先の薬局から発送なので実費だけど、先生は困っている人からはお金をとらないのだそうです。今回私たちが遠くからやってきており泊まりなのも知って、お金がかかっているから免除して下さったみたいです。


と、そこへ診察ベットの方からげんちゃんが
「これ、湯たんぽ(お湯)替えてー」と手を差し出すと、先ほどのマダムがすっくと立って外の給湯室へ行きました。
(あっ、私の湯たんぽくれた人だ!)
後から判明したこと。
このマダムとSさん、先生の魅力にとりつかれ、報酬は一切もらわずにボランティアで先生のお手伝いに来ているそうです。


やっぱりここの名前は「不思議荘」です。
なんかその魔力にすっかりとりつかれてしまいました。


気功だけで、私の股関節の特に左が悪いのを当ててしまった先生、昼間は漢方の薬局に勤めながら夜にやってくるお弟子さんのすみちゃん、ムードメーカーのお弟子さんげんちゃん、ジャスミンティーを入れさせたら天下一品Sさん、微笑みの湯たんぽマダム、それにここに座っている30代くらいの明るく笑っているお姉さんは・・・
と思っていたら「どうぞー」と言われ奥へ。患者さんでした。
診る人と診られる人の境がわからないボーダレス。
それが不思議荘です。